この間は全世界がゾンビになったという「ゾンビランド」を見ましたが、今回は世界中が吸血鬼になったという「ステイクランド」の感想です。
軽いネタバレあり。
世界中が吸血鬼になって、両親も吸血鬼に殺された主人公が色んな出会いや別れを経て成長する物語。
ヴァンパイアが蔓延る世界。アメリカ合衆国の秩序は崩壊し、大都市はすべて壊滅。大統領も職務を放棄して逃亡し、生存者が生活できる場所は、ごくわずかだった。そんなある日、家族と暮らしていた少年マーティンの家もヴァンパイアに襲われ、かろうじてマーティンだけが、ミスターと呼ばれるヴァンパイア・ハンターに助けられた。絶望に包まれた、行き場のない世界。マーティンはミスターと共に、北部に残されているという安全な聖域を目指し、旅に出ることになるが…。
2010年のインディペンデント映画の中で一際注目を浴びた快作がついに日本上陸。近年流行のヴァンパイア映画ながら、ゾンビ映画のスタイルと、ロードムービー要素を併せ持ったスタイルが観客の絶大な支持を集め、ホラー映画の聖地・トロント映画祭ミッドナイト・マッドネス部門で最高賞を受賞。
物語は車でアメリカを北上している少年マーティンの語りから始まる。
同行しているミスター曰く、
で無ければ死ぬ、あるいは死んだ後蘇る。
ある日までは普通の人生だったマーティンが突然両親を何者かに殺されたところから全てが一変する。
両親を襲ったのは吸血鬼。
マーティンはたまたま吸血鬼ハンターとして名高いミスターに助けられ、両親を失ったマーティンはそれからミスターと行動を共にする。
数ヶ月の間でアメリカの大半はヴァンパイアの根城と化し、わずかに生き残った都市は厳重な警備のもと日々を細々と生活している。
ちなみに吸血鬼が発生した理由に関しては最後まで触れられません。
ミスターとマーティンが車で北上しているのは吸血鬼が少ないと言われる「ニューエデン」という地を目指す為。
ニューエデンは吸血鬼が少ない代わりに食べ物も何もなく人食い族が存在していると旅人の間で噂されている。
それでも北を目指す二人は途中、人間に追いかけられていた老女を発見。
明言はされてませんでしたがどうやら暴行目的で追われていた模様。
ミスターは追いかけていた人間二人を殺して老女を助ける。
老女はシスターで優しい性格をしている為に、敵に情けをかけないミスターと考え方が合わないことが多々ありつつも二人に同行することを決める。
この世界観では誰もが身寄りの無い者の集団で生活しているわけなので基本的には望んで孤独になろうとする人はいません。
ある日、3人はある人間の集団に捕まる。
彼らは吸血鬼信仰を持つ新興宗教(=ブラザーフッド)で、老女を助ける為に殺した人間はその教祖の息子だった。
教祖の息子を殺し、同士と崇める吸血鬼を殺してきたミスターは報復として吸血鬼の群れに取り残されてしまう。
老女は(恐らく教祖の慰み者として)連れていかれ、マーティンはミスターを助ける為にブラザーフッドから逃げ出す、
というあらすじです。
最後まで通してみると吸血鬼に両親を殺されてから、一人前になるまでのマーティンの成長記録という風にまとめられています。
登場人物もそこそこは出てきますが、そこまで際立った個性が無いので、物語としては地味ですね。
唯一ブラザーフッドの教祖だけは個性的でした。
この映画は一言で言うなれば「ホラー風ロードムービー」なんでしょうかね。
「吸血鬼のせいで全米が疲弊した!」という雰囲気は如実に出てます。
(全米が感動した!みたいなノリで)
その中でも、訪れる町々で懸命に生きようとしている人々を見てマーティンが成長していく過程が描かれています。
捉え方によって感想が変わりそうなストーリーだと思います。
ラストに関しても、この映画をロードムービーとして見れば
「あぁ、きっとこういうことなんだろうなぁ」と分かる形で締りますが、
ホラー映画として見たら
「え?これで終わりなの?」ってなるでしょう。
あとは、吸血鬼の設定が中途半端な気はしました。
劇中に出てくる吸血鬼は基本的には太陽に弱く、脳や心臓をつぶせば行動不能となる。
そして知能は低いという設定。
また、吸血鬼にも種類があり、
肋骨が堅くゾンビみたいな容貌のバーサーカー。
スカンプという子供の吸血鬼。
スカンプは他の吸血鬼と違い、腐敗が無く、牙を除けば見た目は人間と大差無い。
そして、もう1種が終盤に登場。
完全ネタバレになるので最後の種類は伏せますが、とにかく種類分けが生かされる程の展開が無かったのと
・人間と比較して、強いのか弱いのかがいまいちハッキリしない。
・凶暴なハズなのにヘリやトラックで運ばれてるあたり、ブラザーフッドに協力的っぽく見える
・バーサーカーとスカンプはもはや別物のモンスターじゃね?
という点で吸血鬼の設定に統一性を感じなかったのが気になりました。
ホラー映画として見れば地味なストーリー。
ロードムービーとして見れば、成長したマーティンに最後はちょっと爽やかな感じ。
あと、老女が教祖にエロい目で見られ連れて行かれますが具体的なエロ描写は一切無いよ!